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いいとこどりでリフレッシュ「ワーケーション」

働き方改革への取り組みの中、注目を集めている「ワーケーション」。ここでは、そのワーケーションについてお話していきたいと思います。

ワーケーションとは

ワーケーション(Workcation)とは、「ワーク(Work)=仕事」と「バケーション(Vacation)=休暇」を組み合わせた造語です。リゾート地、観光地などで休暇を楽しみながら働くスタイルのことをいいます。2000年代に、インターネットやノートパソコンなどの普及とともにアメリカで生まれた概念と言われており、次第に日本でも浸透してきています。

日本ではもともとバカンスを取るという認識があまりなく、「長く働いていた方が偉い」という旧時代的価値観が根強くあるため、有給を取得しにくいという状況でした。働き方改革を推し進める上で「2020年までに有給休暇取得率を70%に」という目標があるにも関わらず達成が難しい状態でしたが、その改善策としてワーケーションを活用する動きが出てきました。また、コロナ禍で働き方が多様化し、多くの企業がテレワークを導入し、政府が「Go To キャンペーン」を実施した際、特に注目されるようになりました。

観光庁では、ワーケーションやブレジャー(Business(ビジネス)とLeisure(レジャー)を組み合わせた造語。出張等の機会を活用し余暇を楽しむこと)等の仕事と休暇を組み合わせた滞在型旅行を、働き方改革などとも合致した「新たな旅のスタイル」と位置づけ、その普及を促進しています。

参考:「新たな旅のスタイル」ワーケーション&ブレジャー|観光庁

ワーケーションとテレワークの違い

テレワークは自宅やコアワーキングスペースなどでの仕事をいいますが、ワーケーションはリゾート地や観光地での仕事が前提です。ワーケーションはあくまで「休暇を取りながら必要に応じて仕事を行う」ことが前提ですので、単純な場所の違いだけではなく、目的そのものに違いがあります。また休暇が前提ですので、ずっとワーケーションというものではなく、期間も限定的です。

ワーケーションのメリット

ワーケーションのメリットを改めて挙げてみましょう。

  • 有給・長期休暇を消化しやすくなる
    仕事と関わりながら休暇がとれるワーケーションは、休むことへの罪悪感を軽減し、安心感も得られます。
  • ストレスの緩和、生産性・満足度向上
    長い休暇を取ることができるため、心身のリフレッシュ効果が高く、モチベーションアップの効果もあります。またワーケーションを取ることによる会社への満足度も向上します。またワーケーションでは普段より効率がいいという結果も多くあります。
  • 働き方改革に有効
    先に述べたように、働き方改革において休暇の取得は目標の一つです。ワーケーションの導入で従業員が休暇を取りやすくなり、またエンゲージメントの向上を見込めます。離職者を減らしたり、求職者へのアピールにもなります。

ワーケーションのデメリット

またデメリットとして挙がるのは以下のようなものです。テレワーク導入の問題点に似ている、もしくはワーケーション用に追加対策が必要なものが主になります。

  • 導入・運用コストがかかる
    ワーケーションで行った先で問題なく作業できるように、インターネット回線やVPNなどの環境を整え、オンライン会議やチャットツールなどのソフトウェアを整備し、持ち歩きやすいパソコンを準備する必要があります。
  • セキュリティの不安
    ワーケーション先のホテルや旅館では、セキュリティ面での不安があります。端末管理や機器の扱いなど、ガイドラインをしっかりと設定しなければいけません。
  • 勤怠管理が難しい
    ワーケーションは勤怠管理などの管理が難しくなります。テレワークと同様の管理は可能ですが、「休暇」であるワーケーションにおいてどのように労働時間を考えるかなど、ルールの制定も必要です。

テレワークを導入しているのなら、ワーケーションは難しくない

現状では、ワーケーションの認知度は高まっていますが、まだ広く普及しているとは言えません。ワーケーションを体験した人は全体の4.3%で、テレワークの実施率32.2%と比較してもまだまだ少ない状態です。また、ワーケーションに興味を持っている層は28.2%ですが、ワーケーションに対して無関心な層は64.2%と一番多いです。

一番の理由は「業種としてワーケーションが向いていない」です。
それ以外は、「休暇中や旅行中は仕事をしたくないから」「旅行先では効率が落ちそう」等、個人の休暇に対する意識によるものです。

参考:「新たな旅のスタイル」ワーケーション&ブレジャー 導入企業・ユーザーの動向|観光庁

ここまで見てきて分かるように、業種的にワーケーションを取ることが可能で、既にテレワークを実施している企業であれば、ワーケーションを導入するのは難しくありません。働き方の選択肢の一つとしてワーケーションがあれば、休暇の考え方も変化していくでしょうし、必要な人が必要に応じて相応の休暇を取ることができるようになり、働きやすさの向上にも繋がってきます。

ワーケーションを誘致している自治体もある

自治体にとって、ワーケーションは

  • 観光業の活性化・雇用の創出
  • 地域との交流人口・関係人口の増加による活性化
  • 知名度アップ

などのメリットがあります。

そのため、ワーケーション企業に向けて支援金や通信機器のレンタルを設定するなど、ワーケーションの誘致をしている自治体もあります。ここにその一部をご紹介します。

北海道
北海道の富良野市では、宿泊費やレンタカー使用料の一部の助成を行っています。
https://www.city.furano.hokkaido.jp/life/docs/2021031700026.html

長野県
信州ならではの魅力あふれる地域に滞在して仕事をする新たなライフスタイルを「信州リゾートテレワーク」とし、ドロップインで気軽に利用できるコワーキングスペースから、Wi-Fiやワークスペースなどを備えた旅館・ホテルまで、様々な環境を整えています。
https://shinshu-resorttelework.com/

和歌山県
和歌山県ではワーケーションを「価値創造ツール」と考え、訪問された方々に対して、非日常での活動を通したイノベーション創出の機会を提供できるように取組を進めています。
https://wave.pref.wakayama.lg.jp/020400/workation/index.html

海外でのワーケーション

コロナ禍で、特に観光国は経済的に大きな打撃を受けました。ワーケーションはその解決策の一つとして注目されています。

ワーケーションを受け入れることは、自国の雇用を失うことなく、滞在中の生活や観光などでの消費行動を行ってもらえるため、ワーケーションビザ・リモートワークビザが利用可能な国も増え、ホテルや航空会社などをはじめワーケーション市場は活性化しています。

まとまった期間休暇を取ることができるワーケーションなら、いっそ海外で過ごすのもおすすめです。「長く休めるならあの国に行きたい」というような希望を叶えるのに、ワーケーションは最適です。

働き方の選択肢にワーケーションを取り入れよう

企業にとってのメリットも、従業員にとってのメリットも、ひいては行先にとってのメリットもあるワーケーション。これからの働き方の一つとして浸透していけば、新たな価値の創造につながります。今後も行政や市場での広がりを見せていくであろうワーケーションを、企業の、自分のために導入していくことを考えてみてはいかがでしょうか。