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ピラミッドからテレワークまで。勤怠管理にまつわる四方山話

勤怠管理は、古代エジプトのピラミッド建設現場でも行われていました。勤怠管理やテレワークがどのように発展してきたかを歴史とともに振り返ります。

歴史の中の勤怠管理

古代エジプトのピラミッド建設現場では、きちんと勤怠管理が行われていたようです。当時書き物に使われていたのはオストラコンという陶器や石のかけらで、それにはピラミッド作業員の名前・日付、出欠、休んだ理由が記入されており、仕事を休む場合はきちんと理由を告げて申請していたことが分かります。作業員はベースキャンプで暮らし、勤務時間もタイムカードでシステム的に管理していたことが分かっています。

19世紀後半には、世界的に産業の近代化が進み、組織の運営に従業員の勤怠管理が必須となってきます。そして1871年にアメリカでタイムレコーダーが開発されました。

日本では江戸時代に、三井越後屋が今の勤怠管理の概念に近い「改勤帳」という勤怠管理表を活用していたことが分かっています。その後明治時代の近代化に伴い、「会社」という形態が生まれました。

その後タイムレコーダーが輸入され、多くの企業で利用されました。
1931年には日本初のタイムレコーダーが開発されますが、これは機械での字送りや電気による時刻印字が行える画期的なものだったそうです。

企業社会が発展し、賃金計算に便利なタイムレコーダーの需要が高まり、その後技術の発展に伴い、様々な機能を持った勤怠管理システムが生まれていきました。

テレワークの勤怠管理

現代において一般的となったテレワーク。テレワークにおける勤怠管理は、「出勤したらオフィスの入口にあるタイムレコーダーで打刻」という管理の仕方ができないため、勤怠管理システムの導入などの対策が必要です。

そもそもテレワークの元祖は古代ローマといえます。古代ローマでは役人や文官が自宅や別荘から仕事を行う、テレワーク=離れた場所で仕事をするという形態の働き方が主流でした。これは役人や文官の職務内容が行政業務や政務であり、特定の場所にいなければならないものではなかったこと、手紙や使者というコミュニケーション手段が盛んだったことから可能になりました。

手紙などを利用してのテレワークは、商業交易が盛んになる中世以降には一般的になりました。しかし当時の彼らの働き方は、「勤怠を管理」する性質のものではありませんでした。勤怠管理が必要な「従業員のテレワーク」という概念の登場は、1970年代のアメリカにおいてでした。

1970年代のアメリカでは大気汚染による環境問題が深刻化し、また1973~1979年にはオイルショックにより世界経済に大打撃がありました。大気汚染軽減・交通混雑緩和・省エネルギーのため、マイカー通勤を避ける目的でテレワークという概念が生まれました。「テレワーク」もしくは当時の呼び方「テレコミューティング(Tele=遠隔、Commuting=通勤)」は、物理学者のジャック・ニルズ氏により生み出された言葉です。彼は米航空宇宙局の通信システム作業を自宅で行っていた学者で、宇宙工学の講師でもありました。ある時「月に人を送ることができる時代に、交通渋滞が解決できないのはなぜか」という質問に窮したことから、テレワークの研究を始めたそうです。

しかし当時は高速インターネットもなく、現代のテレワークに比べると技術的な制約が大きく、コミュニケーション手段も限られていたため、定着しませんでした。勤怠管理がうまくできないということもその原因の一つだったでしょう。しかし、テレワークの概念はここで広まり、将来的な働き方の選択肢として重要視されるようになりました。1980年代以降パソコンの利用率が上がり、また大きな地震などがあったアメリカでは、リスク分散のためのテレワークに注目が集まるようになっていきます。

日本では1984年に、日本の日本電気株式会社(NEC)が、東京都武蔵野市の吉祥寺エリアにサテライトオフィスを設置したのがテレワークの始まりとされています。当時日本はバブル景気で、都市部のオフィス賃料が高騰したため、コスト削減の目的で郊外にサテライトオフィスを設置する企業が次々と現れました。当時のテレワークは自宅などで行うものではなく、サテライトオフィスへの出勤があったため、勤怠管理も各サテライトオフィスで行われていました。バブル崩壊とともに日本のテレワークは減少しましたが、1990年代になると再び注目されます。技術の発展、そして1995年の阪神淡路大震災を背景に、「災害復興型のサテライトオフィス実験」などの改革が政府による主導で実施され、テレワークという概念が全国規模で浸透していきました。

情報通信技術の進化によるチャットシステムやコミュニケーションシステムの進化を背景に2019年から開始された「働き方改革」では、テレワークを「ICTを活用した時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方」として推奨しています。さらに2020年の新型コロナウィルスの感染拡大により自宅での業務が余儀なくされたことからテレワークは一般化しました。緊急事態宣言下は自宅でパソコンを立ち上げ勤務開始となるため、その時間を管理したり、従業員それぞれの様子を把握しやすくする勤怠管理システムが各企業に導入されました。

アフターコロナの今、オフィス勤務とテレワークのハイブリッド運用の企業も増え、もはや画一的に管理できる時代ではなくなりました。出勤・テレワーク・フリーアドレス、時短勤務・フレックスタイム、働き方が様々でも問題なく打刻・管理できる、社員証にタイムカードの機能も持たせる、パソコンやスマホなど、デバイスを選ばず利用できるという風に、多様化した働き方をカバーできる勤怠管理システムが求められています。

「勤怠」という言葉

ちなみに、「勤怠」という言葉についてですが、「怠」は「おこたる」「なまける」「気持ちがゆるむ」という意味を持ち、「怠惰」といった使い方をされるため、勤怠=働いている時/サボっている時、という意味に感じてしまうかもしれません。
「勤怠管理」という言葉で使う場合には、単純に

「勤」=働いている時間
「怠」=働いていない時間

という意味になります。「勤」に働くという意味があり、その対義語が「怠」であるため、「勤怠」という熟語として使われています。イメージが悪いということで、「勤退」と表記する場合もあるようです。