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行動マネジメントとは?考え方や特徴、テクニックについて解説

行動科学マネジメントとは、労働人口の減少しつつある日本でこれから必須になるマネジメント手法です。従来のマネジメントとは違い、成果や内面にフォーカスするのではなく、人の行動にフォーカスして行動を促す点が大きな特徴です。本記事では行動科学マネジメントとはどのような手法なのか、特徴、効果的に運用するテクニックなどを紹介していきます。

行動科学マネジメントは、今本当に求められるマネジメント

行動科学マネジメントは行動分析学から生まれたマネジメント手法で、人間の行動原理に着目し、科学的視点から再現性の高い結果を得ることを求めるマネジメント方法です。
行動分析学の考え方は、行動そのものを研究し、原因を過去と現在に求めることを重視しています。また、分析方法はシンプルにしつつ、観察による行動分析を行うことが特徴です。
行動科学マネジメントにおいては、次のサイクルが重要になります。

  • 1.目標設定
  • 2.行動
  • 3.改善

行動科学マネジメントは人口減少局面にある日本において、社会を支える労働人口も減少することを鑑みて、誰もが「できる人」になるために必要な方法です。
社会の価値観が多様化する中で、再現性の高いマネジメント方法として、行動科学マネジメントは注目が集まっています。

行動科学マネジメントとは

行動科学マネジメントは再現性の高いマネジメント手法であり、一般的なマネジメントとは大きな違いがあります。
一般的なマネジメントは成果に着目するものであり、結果というゴールに向けてマネジメントしていくものです。そのため、結果のみに着目するために、結果に至るまでの過程は重視されず、再現性が低いという欠点があります。
行動科学マネジメントにおける成果は、行動をベースとして結果を導くことを重視しています。つまり行動というプロセスに着目することで、成果へと結びつく行動を科学的に分析でき、誰でも同じ成果を導き出せるのが行動科学マネジメントです。
近年は日本企業でも行動科学マネジメントを導入する企業が増加しており、再現性の高さから成果に繋がり始めています。

行動科学マネジメントは「人の行動」を注視する

行動科学マネジメントは「精神面」ではなく「人の行動」を注視する点が特徴です。従来のマネジメント手法は、マネジメントする相手の精神面や考え方、やる気にフォーカスし、相手の意欲を高めて変化を促す方法でした。
しかし人間の内面は人生経験が反映されるもので、アプローチ方法もバラバラで簡単に変えることはできません。
一方、行動科学マネジメントは人の行動にフォーカスすることから、行動の原理を観察することで、成果に繋がる行動変容を促せます。
行動科学マネジメントでは、より具体的な行動変容に繋げるため「MORS(モアーズ)の法則(具体性の法則)」を重視しています。

  • 1.Measured/計測できる=数値化できる
  • 2.Observable/観察できる=誰が見てもどんな行動をしているかわかる
  • 3.Reliable/信頼できる=どんな人が見ても、同じ行動だと認識できる
  • 4.Specific/明確化されている=何をどうするか明らかである

この4つに基づいて具体的な指示を行うことが行動科学マネジメントでは重要とされています。

行動科学マネジメントの特徴

行動科学マネジメントは一般的なマネジメント手法とは違った特徴があります。どのような特徴があるのかご紹介します。

実用性が高い

行動科学マネジメントは実用性が高く、仕事の成果に繋がる行動をすぐに取ってもらえます。マネジメントする側「望ましい行動」を指示しやすく、従業員も指示通りに動けばより効率的な行動に繋がります。

成果に繋がりやすい

行動科学マネジメントでは、従業員に「望ましい行動」を指示できることから、業務課題の改善に繋がりやすく、成果も出しやすいという特徴があります。
マネジメントする際は、現状の課題を正しく認識する必要性はありますが、MORSの法則に基づいて観察すれば、従業員個々の問題点が把握できます。
即効性の高いマネジメント手法として、行動科学マネジメントは有用です。

生産性が向上

行動科学においては「2:8の法則」というものがあります。2割が必死に働き、残りの8割は手を抜くという人間心理です。
行動科学マネジメントでは、8割の側に積極的なアプローチを行うことで、2割の側のパフォーマンスに近づける効果が期待できます。8割の生産性が高まれば、組織としての生産性も向上できます。

専門知識がいらない

行動科学マネジメントは名前こそ専門的ですが、専門知識のないマネージャーでもすぐに実践できます。行動科学マネジメントは社内のハイパフォーマーの行動を分析することで、それ以外の従業員の課題解決にも活かしていく点が特徴です。
一般的なマネジメントとは違い、行動分析に専門知識が不要で、数値化したデータを基にどのような行動が望ましいか判断し、指示すればよいだけです。

モチベーションアップ

行動科学マネジメントは従業員のモチベーションアップにも繋がります。従来の手法は成果を出せる人と出せない人で明暗が分かれ、成果が出せなければモチベーションは下がるだけでした。
行動科学マネジメントは従業員に望ましい行動を指示できるため、短期間で成果に繋がります。従業員にとっては成果が出ることで仕事へのやりがいとなり、さらに努力することで結果を出すという好循環が作れます。
従業員全体のモチベーションが高まれば、組織全体の生産性向上にも繋がるでしょう。

具体性のある指示

マネジメントする立場から見た特徴として、行動科学マネジメントは具体性のある指示を出しやすい点があります。例えば、これまでのマネジメント手法は「もっと意欲を出すように」や「弱気にならず次へ活かせ」という精神論になりがちです。
行動科学マネジメントは行動を分析し、どの行動が、どれくらい足りず、余計な行動は何かという点を数値化できます。そのため従業員への指示出しが具体的で、マネージャーも従業員も同じ方向性で行動できます。
マネージャーは「どうすれば生産性が上がるのか」と悩む必要がなくなるため、効率的なマネジメント手法と言えるでしょう。

行動をマネジメントする方法

行動科学マネジメントを実践するには、なぜ人間が行動するのかという原理、原則を追求しなければなりません。人が行動をする際は、そこに何らかの条件があり、その結果が行動に繋がっています。
そして、行動した結果に基づいて次の行動が促される、という順序です。これを行動科学マネジメントでは「ABCモデル」と呼び、条件・行動・結果の3つのサイクルで人間は行動すると考えます。

  • A(Antecedent)【先行条件】:行動を起こす条件や環境
  • B(Behavior)【行動】:行動や発言
  • C(Consequence)【結果】:行動・発言によって生まれる結果・環境の変化

簡単な例を出すと、Aが「お腹が空いた」と感じ、Bが「食事を摂る」、Cが「満腹になる」と思えばわかりやすいでしょう。
お腹が空いているからといって、空腹感を満たすために掃除をする人がいるとしたら、それは間違った行動であると誰でもわかるはずです。
行動科学マネジメントは、ABCモデルで条件に基づいた望ましい行動を促し、結果に繋げていく手法ということです。

行動科学マネジメントの手順

行動科学マネジメントの正しい手順についてご紹介します。

必要な行動を明確化する

まずは成果に繋げるために、必要な行動は何かを明確化しましょう。成績の良し悪しは行動に現れるため、成績の良い従業員の行動を分析し、成績の思わしくない従業員との違いを比較します。
比較した結果、必要な行動を明確にすれば、どのような指示を出すべきかという点がわかりやすくなります。

行動を継続してもらう

必要な行動を明確化したら、次は従業員に行動を実践、継続してもらいましょう。指示を行っても一過性では効果が期待できず、反復継続してもらう必要があります。
また、継続してもらうには従業員の理解も不可欠ですから、丁寧に説明し理解してもらうことを優先してください。そして実践した結果が良ければ、褒めることで行動を継続してもらうことが重要です。

行動を評価する

望ましい行動を指示しても、人によっては実践できていなかったり、継続が難しかったりすることもあります。その場合も、なぜ実践できないのか、継続が難しい理由は何かを評価しましょう。
指示の内容そのものは理解しているのであれば、実際に行動する方法がわからないことも考えられます。どうすれば行動に移しやすいのか、指示内容を細分化して実践できる部分からステップアップするのもよいでしょう。

マネジメントの方法を変える

望ましい行動ができない場合、従業員だけの問題ではなく、教えているマネージャー側の問題がないかどうかも検討すべきです。人は自分の価値観や能力を基準に考えるため、従業員にとっては難しい行動ということもあり得ます。
マネジメントの成果が出ない時は、マネージャー自身の方法も振り返ることが重要です。

行動科学マネジメントのテクニック

行動科学マネジメントは一時的なものではなく、継続することで効果を発揮する手法です。継続した効果を得るためのテクニックについてご紹介します。

行動を計測する

行動科学マネジメントの効果を継続するには、望ましい行動をとった回数を分析し、従業員の行動を評価しましょう。望ましい行動は組織にとっての利益となり、従業員の自発的な行動が評価されれば、従業員のモチベーションにも繋がります。

行動はその場で褒める

人間が自発的に行動するには「ちゃんと見てくれている」という安心感と前向きな気持ちが原動力になります。従業員のモチベーションを高めるには、望ましい行動をとったその場で褒めることを大事にしてください。
後になって褒められても「何の話だろう」となりかねません。その場で褒めることで自発的な行動を促進し、マネジメントの効果をより高められます。

数字を基に褒める

褒めるという行為は、具体的な理由があるほど従業員の実感に繋がります。そのため、望ましい行動をとった回数、その結果が好成績に繋がったことを数字で評価しましょう。
数字があると客観的な指標としても理解しやすく、目に見える形で残ることで従業員全員で共有できます。また目に見える形で褒めれば、「次はもっと行動回数を増やそう」という意欲も高められます。

間接的に褒める

マネージャーが従業員を褒める際は、第三者を介して間接的に褒めるという方法も効果的です。マネージャーが直接褒めることも大切ですが、それだけでは褒め方がワンパターンになり、モチベーションが上がりにくくなります。
従業員を指導している先輩社員や他部署の上司など、第三者を介して褒めてもらうことで、真実味が高まるという効果もあります。

対面の場で褒める

日常業務の中で褒める方法も効果的ですが、時には応接室や面談室で時間を取り、1対1の対面の場で褒めるという方法もおすすめです。
他にも、朝のミーティングや会議の場を利用する方法も、アレンジしやすいテクニックです。他の従業員の前で褒めるという行為は、従業員の自尊心を高め、質の高い行動に繋がります。

まとめ:行動を評価することが好循環に繋がる

行動科学マネジメントの観点では、成果ではなく、望ましい行動をとることが成果に繋がると考えます。そのためには、どの従業員がどのような行動をとっているか把握し、必要なら行動を修正していくことが重要です。
従業員の行動を管理するにあたって、紙の記録やエクセルで記録する方法もありますが、マネージャーと従業員双方にとって大きな負担です。
従業員の行動管理を効率化し、マネジメントに繋げるのであれば、行動管理ツールの導入をおすすめします。あらゆるデバイスから利用・管理・指示がしやすく、管理項目の編集・入力も簡単に行えます。
行動科学マネジメントで組織の成長を狙うなら、ぜひ行動管理ツールをご利用ください。

まとめ

行動科学マネジメントは、今本当に求められるマネジメント

行動分析学から生まれたもので、人間の行動原理に着目し、科学的視点から再現性の高い結果を得ることを求めるマネジメント方法

行動科学マネジメントとは

行動をベースとして結果を導くことを重視し、誰でも同じ成果を導き出せる

行動科学マネジメントは「人の行動」を注視する

行動の原理を観察することで、成果に繋がる行動変容を促す。

「MORS(モアーズ)の法則(具体性の法則)」

  • 1.Measured/計測できる=数値化できる
  • 2.Observable/観察できる=誰が見てもどんな行動をしているかわかる
  • 3.Reliable/信頼できる=どんな人が見ても、同じ行動だと認識できる
  • 4.Specific/明確化されている=何をどうするか明らかである

この4つに基づき具体的な指示を行う

行動科学マネジメントの特徴

  • 実用性が高い
  • 成果に繋がりやすい
  • 生産性が向上
  • 専門知識がいらない
  • モチベーションアップ
  • 具体性のある指示

行動をマネジメントする方法

  • A(Antecedent)【先行条件】:行動を起こす条件や環境
  • B(Behavior)【行動】:行動や発言
  • C(Consequence)【結果】:行動・発言によって生まれる結果・環境の変化

これらのサイクル(ABCモデル)において望ましい行動を促し結果に繋げていく

行動科学マネジメントの手順

  • 必要な行動を明確化する
  • 行動を継続してもらう
  • 行動を評価する
  • マネジメントの方法を変える

行動科学マネジメントのテクニック

  • 行動を計測する
  • 行動はその場で褒める
  • 数字を基に褒める
  • 間接的に褒める
  • 対面の場で褒める

まとめ:行動を評価することが好循環に繋がる