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「テレワーク」これからも続ける?続けない?

2023年5月、厚生労働省が新型コロナウィルスを5類感染症に移行したと発表しました。ようやくやってきた「普通の日常」が嬉しい反面、コロナ禍で変化した働き方を今後どうしていくか、先を見据えて考えることが急務である時期になっています。

特に「テレワーク」は、コロナ禍で急速に社会に浸透した働き方であるため、今その扱いをどうするか、これからも続けるのか、各企業が対応を考えています。既にテレワークでの業務を縮小・廃止している企業も出てきており、すっかりコロナ前の働き方に戻った…という例もあります。東京都が毎月実施しているテレワーク実施率調査結果 6月によると、テレワーク実施企業は全体の44.0%となり、最高値だった2021年の65.0%から減少しています。

なぜテレワークを縮小・廃止するのか

テレワークを廃止し、従業員が出社する形に戻すのにはもちろん理由があります。

コミュニケーションが取りにくい

チャットツールやWeb会議を使って工夫していても、顔を合わせてのコミュニケーションにはどうしても及びません。ちょっとした会話で仕事上の疑問や問題が解決したり、チームの連帯感が生まれたりするのは、対面のコミュニケーションの強みです。テレワークで人と会う機会が減ったために、孤独感を感じたりメンタルヘルスに問題が起こる事例もあったため、出社して人と関わるようにしようと考える企業は多くあります。

社員を管理しにくい

管理職の立場からすると、見回せば社員一人一人の表情まで確認することができることは、出社する場合の大きなメリットです。勤務態度が分かりやすいだけではなく、例えば表情からチームメンバーの好不調を読み取り、必要なフォローをすることもできます。特に新入社員の育成には、テレワークより対面の方が好都合な面もあります。

情報漏洩やPCのウィルス感染等セキュリティのリスクがある

社外で働く人が増えると、情報漏洩のリスクも高まります。ルールを決めてテレワークを運用していたとしても、オフィスでの業務に比べるとネットワークの脆弱性や不特定多数の人の目に触れることなどから、情報漏洩の可能性は高まってしまいます。

従業員は存続を希望!?ワークライフバランスの確保ができるテレワーク

しかし、従業員の意見としては、テレワークは廃止せず今後も継続してほしいというのが大半のようです。国土交通省が発表したテレワーク人口実態調査によると、「雇用型テレワーカーのうち、約87%がテレワークの継続意向がある」という結果となっています。

従業員にとってのメリットは、通勤にかかる時間、そしてストレスが減少することです。
通勤にかかる時間がないことは、そのままプライベートの時間を確保することにつながり、ワークライフバランスをよい状態に保つことができます。また満員電車に揺られるストレスがなくなることで、精神的にも余裕が生まれ前向きに日々過ごすことができます。
集中して作業できるために生産性が上がったり、モチベーションが向上するなどの利点もあります。

企業運営にとってもテレワークは役に立つ

企業にとってのテレワークはどうでしょうか。

まず挙げられる利点が、交通費支給・オフィス面積節約等のコスト削減です。
テレワークで出社率を下げ、フリーアドレスなども導入しオフィス面積を最小限にすれば、社員の定期代・オフィスの家賃などのコストを削減できます。

さらに、テレワークではオンラインでの情報共有や資料閲覧が必須になるため、DX化も進みます。業務フローの見直しも同時に行われるため、業務の効率化にもなります。

また、テレワークにより「非常災害時等における事業継続性(BCP)の確保」が可能になります。コロナのような感染症が発生したり、自然災害やテロなど、万が一の出来事が起こった際に、社員を出社させなくてもよく、それぞれが安全な場所で仕事ができるというのは、事業を継続する上で非常に重要なメリットであり、これからの企業にとって必要なことです。

人材確保のためにも、SDGsにもテレワークは有効

2021年以降、アメリカをはじめとする欧米諸国でGreat Resignation(大量自主退職時代)と言われる現象が起きています。これは、経済回復が進む中、大量の労働者が解雇ではなく自ら退職・転職しているという状況のことです。テレワークのメリットを体感したために、今後も柔軟な働き方を続けていきたいという人が増加したことが要因のひとつとして挙げられます。

日本ではここまでの大きな現象は起こらないと考えられていますが、就職・転職を考える際に「テレワークの有無」を条件の一つに挙げる人は増えています。テレワークが可能であれば育児・療養・介護・転居などの可能性が広がるので新規雇用・離職防止に有利ですし、SGDs推進にも繋がります。企業としての価値を高める意味でも、テレワークの導入は重要なファクターとなってくるでしょう。

従業員にとっても、企業にとってもテレワークはメリットがある

以上のように、テレワークによるメリットは

  • 従業員のワークライフバランスを確保しやすい
  • コスト削減になる
  • DX化が進む
  • 事業継続性(BCP)の確保が可能
  • 人材確保に有利
  • 持続可能な社会への貢献を望むことができる

といったことになります。2019年4月1日に政府により「働き方改革」が施工されて以来、テレワークが推進されているのは、「一億総活躍社会」を目指すためにテレワークが有効とされているからなのです。

テレワークを続けるために見直すべきこと

コロナ禍の「やむを得ない」対策としてではなく、通常運用として今後もテレワークを続けていくためには、どのようなことに注目すべきでしょうか。

セキュリティの確保

テレワークを続けるうえで何よりも大切なのはセキュリティの確保です。自社にとって必要なツールを選定し、防止対策を万全にし、従業員への情報共有を行い意識の統一を図りましょう。作業場所を自宅のみにする等のルールを設けることも大切です。

ツールを上手に活用する

勤怠管理・データ共有・コミュニケーションツールなど、仕事をする上で便利なツールを活用しましょう。先に述べたセキュリティの面でも安心できるものをしっかり選定し運用することで、仕事しやすい環境を作ることができます。定期的に従業員の意見を聞いて運用やルールを見直すことを忘れないようにしましょう。

業務の無駄を省き効率的に作業できるような土壌を作る

それぞれの場所で働くからこそ、無駄を省く意識が必要です。この作業はもっと効率的にできる、この作業はこうすれば工数を減らせるという考え方を常に持って仕事する土壌を作りましょう。

自己管理・コミュニケーションを工夫する

仕事とプライベートの区別がつきにくくなりがちなテレワークなので、自己管理能力はおのずと必要になります。またコミュニケーションには今までとは違う工夫が必要です。Web会議では顔を見せる、チャットツールでの返事の仕方に注意するなど、小さな工夫から全体でのルールまで、それぞれが能動的に考えましょう。

ハイブリッドという選択肢も

テレワークとオフィスワークを組み合わせたハイブリッドワークで運用するという方法もあります。
特定の曜日は出社する・出社日を自分で好きに決められる等、ルールは企業ごとに様々ですが、従業員が主体性をもって働くことができ、その時ふさわしい場所で仕事ができるため生産性もアップします。ただし管理が複雑になったり、コミュニケーションやセキュリティでの問題は残るので、自社に合っているかどうかを考えたうえで運用しましょう。

テレワークが自社の未来に必要かを考えて継続・廃止を決めよう

「以前はテレワークではなかったから」や、「テレワークだとやりにくいから」といった漠然とした理由でテレワークを廃止しようとしているのであればちょっと待ってください。今こそ改めて、テレワークは自社にとってどんなメリット・デメリットがあるのか、効率的な運用方法や改善策はあるのかといった点、そして従業員にとって・企業運営にとって何が大切か、今後自社はどのような姿になるのかまでしっかりと考え、テレワーク要不要を決めましょう。

まとめ

なぜテレワークを縮小・廃止するのか

  • コミュニケーションが取りにくい
  • 社員を管理しにくい
  • 情報漏洩やPCのウィルス感染等セキュリティのリスクがある

従業員は存続を希望!?ワークライフバランスの確保ができるテレワーク

国土交通省の調査によると、「雇用型テレワーカーのうち、約87%がテレワークの継続意向がある」という結果に

企業運営にとってもテレワークは役に立つ

コスト削減、DX化推進、業継続性(BCP)の確保など企業にとって良い影響もある

人材確保のためにも、SDGsにもテレワークは有効

育児・療養・介護・転居などの可能性が広がるため、新規雇用・離職防止に有利であり、SDGs推進にも繋がる

従業員にとっても、企業にとってもテレワークはメリットがある

  • 従業員のワークライフバランスを確保しやすい
  • コスト削減になる
  • DX化が進む
  • 事業継続性(BCP)の確保が可能
  • 人材確保に有利・持続可能な社会への貢献を望むことができる

テレワークを続けるために見直すべきこと

  • セキュリティの確保
  • ツールを上手に活用する
  • 業務の無駄を省き効率的に作業できるような土壌を作る
  • 自己管理・コミュニケーションを工夫する

ハイブリッドという選択肢も

テレワークとオフィスワークを組み合わせたハイブリッドワークで運用するという方法もある

テレワークが自社の未来に必要かを考えて継続・廃止を決めよう