悪気のない「場所取り」が引き起こすもの
ランチや会議で少し席を外す際、上着やPCを置いて「場所取り」をしてしまう。
個人の視点では「戻ってくるから効率的だ」と感じるこの行動が、フリーアドレスのオフィスにおいては、全体規律を崩壊させるトリガーとなることがあります。
なぜ、たった1つの荷物が、周囲にストレスを与え、オフィスの荒廃を招くのか。本稿では、環境心理学の視点からそのメカニズムを解明し、快適な職場環境を維持するための行動原則を考察します。
1. オフィスの「割れ窓理論」
個人の軽微なマナー違反が、組織全体のモラル低下を招く現象は、犯罪学者ジョージ・ケリングらが提唱した 「割れ窓理論(Broken Windows Theory)」 によって説明できます。
■ モラル崩壊の連鎖プロセス
「建物の窓が1枚割れているのを放置すると、誰も注意を払っていないというサインになり、やがて街全体が荒廃する」というこの理論は、オフィス環境にも当てはまります。
- 例外の発生:
「あの人が荷物を置いて席を確保している」という光景を放置すると、それは「このオフィスでは場所取りが許容される」という誤ったシグナルとなります。 - なし崩し的な模倣:
「自分だけ損をしたくない」という心理が働き、追随する社員が増加します。 - 機能不全:
結果として、空席表示なのに座れない席が溢れかえり、フリーアドレスの最大のメリットである「流動性」が完全に機能しなくなります。
2. 「パブリック・テリトリー」という認識
人は無意識に、自分の空間を確保(縄張り化)しようとする習性を持っています。しかし、オフィスにおける空間の定義を再認識することで、トラブルを未然に防ぐことができます。
■ 空間の3分類
環境心理学において、人間の空間認識(テリトリー)は以下の3つに分類されます。
- 一次的テリトリー(Private):
自宅の部屋など、排他的な支配権を持つ空間。 - 二次的テリトリー(Secondary):
教室のいつもの席や固定席など、ある程度の占有が認められる空間。 - 公共的テリトリー(Public):
公園のベンチやカフェの席など、一時的な利用のみが許され、占有権がない空間。
フリーアドレスにおける座席は、固定席(二次的テリトリー)ではなく、カフェと同じ 「公共的テリトリー」 です。カフェで何時間も荷物だけ置いて席を占領するのがマナー違反であるのと同様の規範意識が求められます。
3. スマートな離席の作法
理論上は「荷物を置かない」のが正解ですが、実務上、どうしても席を確保したい場面もあるでしょう。その際のトラブルを防ぐ鍵は、情報の透明性にあります。
■ ストレスの原因は「不確実性」
周囲が不快に感じる根本原因は、荷物そのものではなく「この人はいつ戻ってくるのか?(あるいは戻らないのか?)」が分からないという 不確実性 にあります。
- 意志の明示:
30分程度の離席であれば、「13:00に戻ります」といったメモを残すのが有効です。 - 管理のシグナル:
メモがあることで、その席は「放置」ではなく「管理下にある」と認識され、周囲の不公平感やストレスは大幅に軽減されます。
【まとめ】規律を守ることは、快適さを守ること
オフィスの秩序は、管理者による監視ではなく、利用者一人ひとりの「環境に対する理解」によって保たれます。
- 割れ窓理論を意識し、例外を作らない。
- 公共的テリトリーであることを理解し、独占しない。
この意識を持つだけで、オフィスはより快適な空間になります。
■ デジタルで「意志」を表示する
「いちいちメモを残すのは手間だ」という場合は、テクノロジーに頼りましょう。座席管理システム「YourDesk」が、スマートな意志表示を代行します。
- ステータス表示+コメント機能:
スマートフォンでコメントを残し、「離席中」に切り替えるだけ。 - 情報の可視化:
周囲の人は画面上で「お昼休憩中だから、すぐ戻るな」と状況を把握できるため、荷物が置いてあっても不快に感じません。 - 予約自動キャンセル機能:
着席されていない座席は設定時間を超えたら自動で空席扱いにし、場所取りをシステム的に防ぐことも可能です。
アナログなメモの代わりに、デジタルなステータス活用を。それが、スマートなオフィスを維持する現代の「教養」です。




