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テレワークでさぼりが発覚したら解雇できる?さぼりの原因と予防法とは?

テレワーク中は勤務時間があいまいで、上司もその場にいないため、社員がさぼってしまうという課題を抱える会社は多数あります。さぼっても解雇されるケースはほとんどなく、テレワークで気がゆるむ社員が一定数いることは事実です。今回はテレワーク中のさぼり対策を紹介しながら、どのようなケースで懲戒解雇という選択肢があるのか、詳しく解説していきます。

テレワークのさぼりは解雇対象になり得る?

テレワークでさぼる社員がいた場合、どうなるのでしょうか。どのような処分がされるのか、詳しく見ていきましょう。
結論からいうと「さぼる=解雇や懲戒処分」になるとは限りません。通常のオフィス勤務でも、集中力を維持するために休憩時間や小休憩を挟むことはよくあることです。
そのため限度はあるものの、テレワークで合間にスマホやパソコンで息抜きをすることは、さぼりと見なされないことはあります。テレワークでは実際にさぼっているかどうか、目視できないために判断が難しいことも背景にあります。
しかしテレワークで業務の遂行が著しく遅滞したり、会社に損害を与えたり、勤務時間中に飲酒したりすれば、当然ながら懲戒処分や解雇の対象になるでしょう。
なによりさぼりが判明すれば、社内での人事考課や査定へも悪影響です。いきなり解雇対象になるとは考えにくいですが、さぼりを繰り返すなら重い処分が下されることも理解しておきましょう。

テレワークのさぼり、なぜ起きる?

通常のオフィス勤務に比べて、テレワークではさぼりが起こりやすいとされています。なぜテレワークではさぼる人が出てしまうのか、その理由を解説します。

タイムスケジュールが個人の判断に任されている

テレワークでは、自宅が仕事場になる特性上、家事や育児をしながら仕事をすることもあります。特にプライベートスペースがそのまま仕事場になっていると、公私で気持ちの切り替えがしにくく、仕事に向かう意識が希薄になりがちです。
仕事時間も個人の裁量に任されることから、オフィスのように仕事の時間を決めて働く必要もありません。そのため「仕事は後でやればいい」と考え、やるべき仕事を後回しにしてしまう人が出てきます。
仕事中の様子を管理できるシステムやツールがない場合は、働き方が個人の裁量に任される点がさぼりの発生原因になります。タイムスケジュール管理がルーズになり、さらに仕事と休憩の時間があいまいになり、さぼりが増えるという悪循環です。

周囲からの視線がない

オフィスでの勤務中は、仕事時間というだけでなく、周囲の社員も働いているからこそ、自身のモチベーションに繋がっている部分もあります。個人のペースで仕事を進めやすい点はいいですが、悪くいえば周囲からの監視の目がないということです。
そのためテレワークでは、オンライン会議のように顔が見えない限り「さぼってもバレないだろう」という意識に繋がりやすいです。特にルールを守れず、日頃からさぼりがちな社員がいる場合、同じテレワークで働いている社員に不公平感が生じます。
誰かがさぼっていても指摘されなければ、真面目に働いている社員としては面白くありません。その結果、他の社員のモチベーションも低下し、さぼりへと繋がってしまいます。
社員間の不公平感を払拭し、適度な緊張状態を保たせるためにも、上司が仕事の進捗状況や取り組み状況を把握できるツールの導入は必須です。

上司が部下のさぼりを気にしてしまう

部署を率いる管理職からすれば、テレワークで仕事の進捗がどうなっているのか、部下がさぼっていないか気になるのは自然なことです。オフィスとは違い、上司から部下が直接見えないため、さぼらずに業務をこなしているか気にしてしまいます。
その結果、上司が部下の業務進捗状況を気にしすぎて、必要以上に報告と連絡を要求するケースがあります。部下からすれば、必要以上に業務に干渉されていると、さぼっていることを疑われていると不安を感じるようになるでしょう。
上司が部下の働きを気にしすぎた結果、信頼関係が損なわれれば、部下がさぼるようになる可能性があります。

テレワークのさぼり、予防法は?

テレワークの状況下では、通常のオフィス勤務とは違ったさぼり予防法が必要です。

勤怠管理を厳格化する

テレワークで問題となるのが時間の管理ですから、勤怠管理を厳格化することで仕事時間を明確化しましょう。テレワークでは社員の集中力が低下しがちで、会社は余計な残業代がかさむことになります。
あらかじめ勤務時間を決めておくほか、残業が発生するなら理由と事前報告を徹底させ、無駄な労働時間を削減しましょう。

コミュニケーションを見直す

テレワークでは、社員が複数人集まってミーティングをするのも難しいため、コミュニケーションが課題になります。その場合、上司と部下で1on1のミーティング時間を設け、業務の報告やいろいろな相談ができる機会を設けましょう。
ミーティングの中で進捗状況や部下の悩みを把握し、信頼関係を築くことでさぼりを予防できます。お互いの表情を確認できますから、部下にとっても「ちゃんと仕事を見てくれている」という安心感に繋がります。

業務内容をジョブ型に切り替える

在宅の仕事では、チーム内の誰がどんな作業をしているか見えにくく、社員が孤立感を覚えることでモチベーションを低下させます。チームで仕事をする場合は、社員ひとりひとりに仕事を割り振る「ジョブ型」に切り替えることも対策です。
それぞれの社員が仕事に専念しやすいかわりに、仕事の遅れがチーム全体にも影響を与えます。さぼりによって他の社員にも影響を与えるという意識があれば、自分の仕事を進める意欲になるだけでなく、さぼることへの心理的な抵抗感になるでしょう。

成果重視の評価制度を導入する

従来の会社は、経験や年数によって昇給や昇格することが一般的で、成果も上がっていました。しかしテレワークでさぼりを減らしつつ成果を出すには、業務による成果を査定や人事評価に加えることが対策になります。
勤務態度は見えにくいですから、仕事でどのような成果を出したのか判断する方が、客観的で公平だからです。さぼれば人事や給与に影響するとわかれば、さぼり抑止に一定の効果が期待できます。

テレワークでさぼりが発覚した社員を解雇できる?

テレワークでさぼっている社員がいた場合、その社員を解雇することは可能なのでしょうか。また解雇できるとしたら、どのようなケースがあるのか紹介します。

さぼりでは解雇までは難しい

社員がテレワークでさぼっていたことが判明しても、それだけでは解雇できません。例えばさぼったのが初めてだった場合、たった1回のさぼりで解雇するのは処分が重すぎますし、他の社員を委縮させることにも繋がり、妥当な判断とはいえないでしょう。
さぼりが常習的で、注意や戒告を繰り返しても改善しないなら、解雇という選択肢も浮上します。
社会通念上、会社からの解雇は、社員のさぼりによって会社に重大な損害が生じ、他の社員にも多大な悪影響を及ぼしていれば可能です。
つまり単にさぼっただけでは、すぐさま解雇にはなりません。

会社に損害を与えるなら解雇できる

次に、解雇できるケースについて考えてみましょう。
単にさぼっただけでは、会社に損害を与えたとはいえず懲戒解雇にはなりませんが、具体的にどのようなことがあれば解雇になるのでしょうか。
例えば日常的にさぼっていたことに加え、会社の資金を横領していた、私的な旅費を経費として計上していた、重要な取引先との契約を解除されたなどです。
特に横領は不法行為となるため、解雇にならなくても停職レベルの事案です。取引先との契約解除では、社員のさぼりや不適切な行為が原因で会社に損害が発生していれば、懲戒解雇もできます。

さぼりによる解雇が認められなかった判例

過去の判例を見てみると、とある学校の教頭が修学旅行中に、待機時間を利用して約5時間ゴルフに興じていたことで懲戒解雇された事件があります。
この事件の判例において、裁判所は懲戒解雇に客観的かつ合理的な理由がなく、社会通念上相当であると認められないとして、処分を無効にしました。
無効とした理由については、業務違反行為が1回だけで常習性がないこと、現実の損害が発生していないことを重視し、処分を無効にしました。
つまり過去の判例からしても、さぼっただけでは解雇するのは難しいことになります。

参考:大阪地判平5・9・29労判642号21頁

会社としてさぼりを減らす工夫をする

テレワーク中の社員管理は、会社にとって重要な課題です。上司の目が届かないことで、部下のモチベーションが低下し、さぼりに繋がりやすいからです。
さぼったからといって解雇するのは難しく、業務に支障が出ても会社が負担しなければなりません。テレワーク中のさぼりを減らすためには、座席管理ツールや勤怠管理ツールも用いて、社員の取り組み状況を可視化することが対策になります。
コミュニケーションや業務改善で解決しない場合は、社員管理がしやすくなるツールの導入がおすすめです。

テレワーク中のさぼりの問題点とは?

まとめ

テレワークのさぼりは解雇対象になり得る?

「さぼる=解雇や懲戒処分」になるとは限らないが、業務の遂行が著しく遅滞したり、会社に損害を与えたり、勤務時間中に飲酒したりすれば、当然ながら懲戒処分や解雇の対象になる。社内での人事考課や査定へも悪影響となる

テレワークのさぼり、なぜ起きる?

タイムスケジュールが個人の判断に任されている・周囲からの視線がない・上司が部下のさぼりを気にしてしまう

テレワークのさぼり、予防法は?

勤怠管理を厳格化する・コミュニケーションを見直す・業務内容をジョブ型に切り替える・成果重視の評価制度を導入する

テレワークでさぼりが発覚した社員を解雇できる?

過去の判例を見ても、さぼりで解雇までは難しい。しかし会社に損害を与えるなら解雇できる。

テレワークはオフィスとは違い、自宅という集中しにくい環境での勤務。自ら集中しやすい環境を整えることも大切